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日本メーカーが水素エンジンを開発する理由とは

日本メーカー4社が水素エンジンを共同研究を進める

2023年5月に、日本のバイクメーカーの4社が水素エンジンの開発を共同で進めることに合意し、そのことを発表した。
「水素小型モビリティ・エンジン技術研究組合」という名称でグループを立ち上げることにしており、すでに管轄省である経済産業省から認可も得ている。
この研究組合の正式なメンバーは、カワカキモーターズ、本田技研工業、スズキ、ヤマハ発動機となっている。
これらに加えて、トヨタ自動車と川崎重工業も、特別組合員という形で参加することになっている。

この技術研究組合では、水素エンジンの小型化と実用化を目指している。
現在トヨタが自動車向けの水素エンジンを実用化しており、いくつかのモデルをすでに市販している状況だ。
水素エンジンをさらに小型化することによってバイクにも搭載できるようにすれば、さらにクリーンエネルギーとして注目されている水素エンジンを普及させることができるのだ。

バイク向けに水素エンジンを開発する理由とは?

バイク向け水素エンジンを開発する理由としては、やはり環境保護に重要な施策となるという点が大きい。
化石燃料の消費をできるだけ抑えて、二酸化炭素の排出量を減らすというのは全世界的な課題となっている。
その点で水素は燃焼によって水しか出さないので、温暖化対策としては非常に有用なシステムとなるわけだ。
日本においてはすでにトヨタの水素自動車が登場している上に、水素スタンドも徐々にではあるが設置されるようになっているので、バイクでも利用できる環境が整いつつある。

バイクのエコ化という点では、世界の多くのメーカーが電動化を推し進めている。
確かにスムーズな加速や強いトルクなどが特徴となっているのだが、バッテリーの小型化に課題が残っている。
そのため大型バイクでは電動化ができているものの、小型バイクについては十分な航続距離を出すためにはまだ難しい面も残されている。
その点で、水素エンジンは基本的にガソリンエンジンと似た構造にすることができるため、バッテリーについての問題を抱えずに済むというわけだ。

また、バイク特有のデザインという点も考慮に入れたいところだ。
自動車と違ってバイクはエンジンなどのパーツがむき出しになっているモデルが多く、それもまた見た目の印象に大きく関わっている。
水素エンジンであれば、従来のエンジンシステムと同じようなパーツ構成にすることができるため、見た目としても違和感のない形に仕上げやすいわけだ。

こうしたさまざまな点を考えると、開発が進んで普及していけば、水素エンジンのバイクが世界中に広まっていく可能性がある。
バイク向けのエンジンで培われた技術は建設機械や船舶、ドローンなどに応用することもできるので、新しいジャンルの動力として採用されるのも夢ではないだろう。